『腎臓病を気にしているのは自分だけの様だ』

『腎臓病を気にしているのは自分だけの様だ』

『腎臓病を気にしているのは自分だけの様だ』

ウチの五番目四男むさし。

好きで潜りに行く海で出会いました。

初見は懐っこそうに歩いてきたので『大丈夫やからほっとけよ』と言ってから数日後、駐車場の東屋でグタッと横になりコンビニで買ってきた缶詰も食べ切れないくらいになっていたので連れ帰ったのが二年半ほど前の話。

皮膚病などもあれど回復を見せ生来の懐っこさから姉弟にもお客さんにも誰にでも引っ付きたがるあわよくば誰の膝でも乗りに行く膝取り名人としてやど有で名を馳せて行きました。

一時はほむらとつむじと『サンペコ兄弟』としてモグモグ食べて丸に棒が生えている様な貫禄にまでなりつむじともよくごはん前バトルを繰り広げていました。

そしてダイエットさせなと思い出した頃に少しずつ細くなった事を内心『ダイエット成功か!?』と喜んでいたのでした。

来た時から万年風邪引きで鼻水が治らないむさし、『ネブライザー』と言う機械と治療法を続け数ヶ月、ほぼ治ったかと安心した冬先に、『腎臓病』が発覚しました。

入院もし医師には覚悟も問われた中で自宅療養を選び、そこから長い長い戦いが始まりました。

最初は投薬する為にシリンジでの流動食、作るだけでも様々に試しました。

薬の溶けかたや経口する際の流れやすさ体勢や自分の手足の置き方、どれ一つ最初から上手くはいかず、むさしにストレスを与えてばかりでした。

そんなストレスへの静かなむさしの抗議はソファやクッション布団への失禁として返され、それらの後始末やむさしの事ばかりに時間を取られ他のみんなを見れなくなった見返りとして、ケンカやマーキング言う事を聞かないとの無言の抗議を返されました。

その抵抗は自分のストレスになりそれがみんなのストレスになり

暗闇の中の出口の見えないトンネル、そんな悪循環だった様です。

それでもむさしは頑張ってくれ、ふた月した頃にやっと自力でカリカリを一粒食べてくれた時は、本当に、本当に嬉しかった。

そこからは、少し時間はかかったもののどんどん自力で食べる量が増え、いっ時は半分以下になった体重も春頃には八割方元に取り戻せ可愛らしい丸っこいむさしが戻っていました。

でもそれから、波はありながらも落ち着いた期間が過ぎ、少しずつまた食べる量が減ってきました。

腎臓病発覚から一年と二ヶ月が過ぎ、容体は安定しているものの現在自力で食べる量は二割から一割分しか食べれていません。

今日も病院に行き先生と相談をして今後の治療方針を考えてきました。

もちろん最初から今までそしてこれからも、治療費はかかっています。

そんな時間も様々なものもむさしの為に注ぎ込み、その陰で他の子達はかまってくれないストレスを溜め込むのです。

ケンカをしてマーキングをしてそれに対して怒る自分にまたストレスを溜めまたそれが自分のストレスになり

それでも、まだむさしは頑張っています。

目の前にいるんです。

誰にでも引っ付きたがる甘えん坊なむさしは、すぐに膝に乗ってきます。

そして満足そうな顔で寛いでくれるのです。

腎臓病の事なんて微塵も気にしていないかの様に。

それでけで、僕の顔には笑顔が浮かんでいるんです。

明日に何が待っていても、いまここにむさしがいてくれるから、僕は明日も頑張ります。

少しずつ他のみんなも見てあげながら。

そしてまた、騒々しくも楽しくて幸せな毎日を過ごせる様に